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贖罪

あなたは旅を続けている。
ハルモニアの空は広い。

「愚か者の話をしようか」
朽ちかけた森番小屋。一夜の宿を求めて立ち寄った場所で、あなたは一人の若者と行き会った。
旅人たちは、そんなふうに出会い、そしてさまざまのことを語り明かす。
お互いに名も告げぬままに語り合ううちに、若者は、つぶやいた。
そうして、若者は語り出す。
たった一人、怒りと憎しみだけを糧に生き、そして死んだ愚か者の話を。
若者がその手にかけた、愚か者の話を。
愚か者は、若者からも多くのものを奪い去った。
愛する者を。絆を。心を。
罪をもたぬ手を。

あなたは気づく。
これは、炉辺の語りなどではないと。
これは、若者の告懈であると。
若者は、贖罪者となって旅をしているのだ。
贖罪者に人と触れあうことは許されない。
すべてを捨て去り、若者は旅を続けている。
なぜ、若者があなたに告白をしたのかは、判らない。
あるいは、あなたが行きずりの、物語の紡ぎ手であったからやもしれない。
「そして、あなたはどこへ行くのか」
あなたは問う。
若者は答えない。彼自身もまた、それを知らないのだろう。
最初の朝日が射す頃、あなたは若者と別れを告げる。
あなたは祈らずにはいられない。
いつか若者が、すべての罪を贖うことを。
その時にこそ、何かが新しく始まるだろう。

一人の愚か者が土に還った時、一人の贖罪者が生まれた。
若者は旅を続ける。
あなたもまた、旅を続ける。

ハルモニアの空は青い。
悲しいほどに、青い。
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